練馬チェスクラブの高橋です。
今回はレーティング別のチェス上達ロードマップを作成しました。
今まで自分自身で取り組んできた内容も含めて書いています。チェス上達に何が必要になってくるのかレーティング別にまとめてみましたので一つの指針として参考にして頂ければ嬉しいです。
レーティングは大会で公式に付与されるFIDEレーティングを基準としています。
目次
【Rating 600〜1000】初心者、初級者
沢山対局する
ルールを覚えたら早速対局してみましょう。
駒の動きやキャスリング等は頭で覚えるよりも実際に動かして感覚で覚えることが大切です。
特殊ルールのアンパッサン、キャスリング、スリーフォールドレペティション(三複同形)、ステイルメイトは意外とルールを忘れがち。
駒をタダで取られない
初心者のうちは自分の駒と相手の駒の利きがどこにあるか、どこまで届いているか把握できていないことが多いです。特にナイトは他の駒に比べて利きを認識しづらいです。対局の中で少しずつ動きに慣れていきましょう。
自分が指す前にそのマスが敵に攻撃されているマスどうか、安全かどうか確認してから指すだけでかなり強くなってくると思います。
相手のうっかりミスを見逃さない
初心者の自分がうっかりミスが多いということは初心者の相手もまたうっかりミスが多いということです。
相手のうっかりミスをめざとく見つけることができれば駒得することが多くなり勝率が高くなります。
まずは自分の駒の利きに相手の駒が入った時に、その駒を取る手を最初に検討してみましょう。実は相手のうっかりミスでタダで取れたり、取って取られてまた取り返せるかもしれません。
簡単なメイトを知る(1手メイト)
対局は基本的にチェックメイトで終わります。
メジャーピース(クイーンとルーク)のメイトは必ず覚えておきましょう。
初心者のうちは一番遭遇率が高いと言えます。
バック・ランク・メイト

キングとルークの連携によるチェックメイト。
キス・オブ・デス

キングとクイーンの連携によるメイト。
【Rating 1000〜1200】初級者上
色々なメイトを知る(1〜3手メイト)
色々な人と対局を重ねて楽しくなっている時期ですが、見逃しているメイトが沢山あるはずです。
メジャーピースのメイトに慣れてきたらメジャーピースとマイナーピース(ナイトとビショップのこと)の連携によるメイトを覚えていきましょう。
メイトスレット(相手が何もしないと次の手でチェックメイトする狙い)を作ったり駒得の狙いを作れるようになります。
この形ではあのメイトが出来るかもしれないと直感的にわかるようになるまで問題を解くのもおススメです。
アラビアン・メイト

ルークとナイトの連携によるチェックメイト。
バレストラ・メイト

クイーンとビショップの連携によるメイト。
基礎的なタクティクスを知る(1〜2手)
もしかするとこのレベルになる頃には既に知っているかもしれませんが、基本的なタクティクスのアイデアを覚えていきましょう。アイデアを覚えたら今度は対局で積極的に使っていきましょう。
ピン(釘付け)

ピン(釘付け)は一直線状に並んだ二つ以上の駒への攻撃です。
この場合ビショップがルークをピンしている状態です。ルークは自分より価値の高い駒(キング)が後ろにあるので動くことができません。特に後ろにいる駒がキングの場合「絶対ピン」と言われます。
スキュア(串刺し)

スキュア(串刺し)はピンに似ていますが配置が逆になっており、価値の高い駒の後ろに価値の低い駒があります。
この場合キングがルークを守れないので白の駒得となります。
フォーク(両取り)

フォーク(両取り)は相手の二つ以上の駒への同時攻撃です。特にナイトによるフォークは気が付きにくいので気を付けましょう。ポーンを含む全ての駒でフォークができます。
オポジション(見合い)

オポジションとは「お互いのキングが向かい合った状態で相手に手番を渡すこと」です。
オポジションを取るとポーンエンディングで有利になる場合がほとんどです。
【Rating 1200〜1400】中級者下
色々なタクティクスを知る
ダブルアタック(二重攻撃)

ダブルアタック(二重攻撃)は2つの狙いを作り、相手が1つの狙いを防いでいる間にもう一つの狙いで駒得します。
この場合「クイーンとビショップによるメイトスレット」と、「守られていないルークのタダ取り」の2つの狙いがあり、同時に2つの狙いを防ぐことができません。ポーンをついてメイトを防いでもルークが取られ、ルークを逃すとメイトになります。
このように一つの動きで二つの狙いを作ることがチェス では良い手とされています。
ディフレクション(そらせ)

ディフレクション(そらせ)は守り駒を強制的に動かすことによって駒得をします。
この場合まず白はルークでチェックをします。このままではバックランクメイトになってしまうので黒はルークを取るしかありません。そうすると黒クイーンの守りが外れます。黒クイーンは誰にも守られていないので白クイーンは黒クイーンを取ることができます。白はルークを取られましたがクイーンを取ったので駒得です。
サクリファイス(駒捨て)

サクリファイス(駒捨て)は文字通り駒をタダで相手にとらせてメイトなどを狙う手のことです。
この場合ルークを捨ててキングを左のマスにおびき寄せてキス・オブ・デスのメイトにすることができます。サクリファイスはメイトの他にもポーンの守りを破壊したり、長期的な有利を築くために指されます。
エクスチェンジサクリファイスはルークとマイナーピースの交換のことで、ポーンの並びを崩したりプロモーションを邪魔する駒を排除するために指されます。
基礎的なポーンエンディングを知る
(K+P vs K)

チェスではワンポーン得でも大きなアドバンテージとなり得ます。
この局面では白の手番でも黒の手番でも白の勝ちです。その理由をしっかり覚えておくと今後のエンディングの理解が早まるでしょう。
有名な定跡を一通り指す
e4オープニングとd4オープニングの定跡を色々と試していくうちに自分にあった定跡が見つかると思います。
まずは好き嫌いせずに一通り指してみることをお勧めします。
まず有名なe4オープニングから。
イタリアン

ルイロペス

シシリアン

フレンチ

カロカン

ピルツ&モダン

以下からd4オープニングへ移ります。
キングズインディアンディフェンス

クイーンズギャンビット

スラブ

ニムゾインディアン

ダッチ

辞書がわりに定跡の本を持っておくと便利です。
全て覚えようとせず、対局後にどのようにゲームが進むのか確認すると理解が深まると思います。
【Rating 1400〜1600】中級者中
棋譜並べ
歴代世界チャンピオンの名局、好きなプレイヤー、好きな定跡の棋譜を並べることでゲームの流れを掴みます。
自分がよく指す定跡であれば実戦に投入できますし、あまり指さない定跡でもいつか取り組むときが来るかもしれません。難解でわからなくても手の意味を自分で考えていくと勉強になります。
ボビー・フィッシャー
第11代世界チャンピオン。日本語翻訳された自戦記「ボビーフィッシャー魂の60局」が出版されていますので興味がある方は是非読んでください。解説の内容はとてもレベルが高いものとなっていますが並べるだけでも勉強になります。
ホセ・ラウル・カパブランカ
第3代世界チャンピオン。シンプルな局面を好み、強豪を相手にいとも簡単に勝ってしまう天才。特にエンディングの感覚を磨くには良いでしょう。
下記の本の60局はchessgames.com で見られます。
https://www.chessgames.com/perl/chesscollection?cid=1002457
ミハイル・タリ
第8代世界チャンピオン。発想豊かな超攻撃的棋風が特徴。タクティクス、サクリファイスの感覚を掴みたい人にはぴったり。日本語翻訳された解説本が出版されていますのでタリの名局を並べるにはちょうど良い1冊です。
得意定跡を作る
いろいろなオープニングを指してみて勝率が高いものや、しっくりくるものがあれば、その定跡がどのように枝分かれしていくか色々と調べてみても面白いでしょう。定跡の狙いや弱点がわかればさらに勝率が上がるかもしれません。
基礎的なタクティクス、メイトを沢山解く(3手程度)
対局を続けていくうちに自分なりにメイトやタクティクスパターンがわかってくると思います。それに加えて本や教材、アプリなどでトレーニングしていくと対局での盤面の見え方が変わってくるでしょう。見た瞬間に「これは何かありそうだ」と感じられるのが理想です。
色々なエンドゲーム
中級者になると以前よりもエンドゲームに突入することが多くなります。(極端な駒得やメイトによって中盤で決着がつかなくなるため)
そんな時にエンドゲームの知識やアイデアが役に立ちます。勝てる局面をしっかり勝つ。引き分けがある局面でしっかり引け分けにできるとポイントを取りこぼすことが少なくなってくるでしょう。
(K+Q vs K+P)

基本的にポーンを先にプロモーションさせた方が有利になります。この局面ではどちらの手番でも白の勝ちです。
白のキングの位置、黒のポーンの位置によって勝ちか引き分けかが決まることを理由とともにしっかり理解しましょう。
(K+R vs K+P)

ストラテジー入門
グッドビショップ バッドビショップ

グッドビショップとは自分のポーンに邪魔されず自由に動き回れるビショップのこと。逆にバッドビショップとは自分のポーンに邪魔されて動きが制限されているビショップ。
この場合丸で囲まれたビショップがグッドビショップです。もう一方がバッドビショップです。自分のバッドビショップを相手のグッドビショップと交換できるようにしましょう。場合によりますが、ポーンを交換してセンターを開くことができれば黒の黒マスビショップがアクティブになります。
グッドビショップはポーンの形によって決まるので定跡の理解が必要不可欠です。
アウトポスト

アウトポストは「拠点」とも呼ばれ、主に4〜6段目の相手のポーンが攻撃できないマスのこと。
このナイトは相手のポーンまたは白マスビショップに攻撃されることがなく、とても強力です。
ポーンの攻撃できないマスを見つけてそこにナイトを放り込みましょう。
【Rating 1600〜1800】中級者上
難しいタクティクス、メイト(5手程度)
長手数やパターン認識しにくいメイト(タクティクス)のトレーニングをしていくと良いと思います。
定跡を絞る
このレベルになると相手も定跡の研究をしている人が多くなるので序盤でミスすることが少なくなります。幅広く研究していると時間が足りないので得意な定跡に絞っていくと良いと思います。
ルークエンディング(K+R+P vs K+R)
終盤で一番遭遇率の高いルークエンディングを勉強していくと良いと思います。
ルークエンディングは難解で、知識やアイデアがないとドローになる可能性が高いです。
フィリドールポジション

フィリドールポジションはワンポーンダウンの状況でドローにするテクニックです。
ルークエンディングの基本と言ってもいいポジションですので対局時に焦らずドローにできるように理解しておきましょう。
ルセナポジション

ルセナポジションはワンポーンアップの時に確実にプロモーションさせるテクニックです。
「橋渡し」とも呼ばれ、ルークを4段目にあげることとその理由をしっかり覚えておきましょう。
その他のルークエンディング

白はこのポジションから確実にポーンをプロモーションさせることができます。どのように進めていけば良いか考えてみてください。
最低限知っておきたいエンドゲームはここにあります。個人的にとてもオススメの本で、マスターからの評価が高いようです。これよりさらに難しいエンドゲームに取り組むときに大いに役立つと思います。
ストラテジー
得意定跡における争点になるマスの把握。弱点になるマスに圧力をかけ続けるために必要な駒交換など、中長期的な作戦を立てられるようになる必要があるでしょう。
トレーニングする順番
とにかくタクティクス
Chess is 99% tactics. Taichmann
「チェスは99% タクティクスだ。」という言葉があります。
少し大袈裟ではありますが、実際タクティクスによって勝敗が決まります。
レーティング2000までは特にタクティクスの能力が大事だと言われています。
オープニングの研究は楽しいですが、とにかくタクティクスのトレーニングを優先していきましょう。
メイト
タクティクス(駒得)
エンドゲーム(終盤)
ミドルゲーム(中盤)
オープニング(序盤)
上に行くほど一手のミスが取り返しにくい順番になっています。
終盤になるにつれてミスの取り返しがつかない。序盤でのミスは苦しいですが先が長いので取り返せる可能性がある。
上級者を超えるとミスが少なくなりタクティクスやメイトでは勝負が決まらず、序盤や中盤での優勢を終盤につなげる事ができるので重要度は逆転します。
オープニングは程々に
オープニングの研究や手順を覚えることは自分が強くなったように思えてとても楽しいですが、実は効率が悪いです。
理由は研究手順にならなかった場合に、研究してきた成果を発揮することができないからです。
イタリアンとルイロペスの研究したとしても、黒がシシリアンを指した場合にはその実力を発揮できません。
また、研究から外れると不安になったり次の手を考えられなくなるようでは本末転倒です。
序盤は初手から研究成果が出せない場合がありますが、タクティクスは1局に必ず何回も出てきます。
そういう意味でもタクティクスを鍛える方が良い結果に結びつきやすいでしょう。
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